本文へスキップ

 ENGLISH 

言葉ではなく実際の行動こそ大切
ズジスワフ・サドウスキー氏
ポーランド共和国元副首相

世界経済の発展における現在の傾向は、不安要素の増大を招くに違いありません。自滅に向かう傾向は30年以上前にメドウズの「成長の限界」に関する報告によって明らかにされましたが、以来、その傾向は勢いが増しています。世界中に急速に拡大している社会的不平等と同様、環境破壊や危険な気候変動などが未来の人類に差し迫った危機をつくりだしています。広がりをみせる知識集約型経済に基づく情報文明は裕福な人々の日常生活に素晴らしい進歩をもたらしていますが、これらの現象への対処に苦しんでいます。
 
第二次世界大戦以来、世界に戦争がなかった日はないと言われています。当然ながら、これらの紛争で最も悲惨なのは世界経済の発展に伴って行われるものであり、とりわけ石油のような重要な原料に対する利権を守り利益を増大させる必要から行われるものです。利権のための争いは、文明や宗教の対立など、本当の理由を隠す様々な変装をして行われます。何が行われているのか真に理解するためには、事態を常により深く見つめなければなりません。

現在の対テロ戦争も例外ではありません。世界でテロが増加しているのは事実ですが、軍事力をもってテロと戦うという概念そのものがまったく愚かなものです。真に求められるのはテロの原因を明確にし、その原因の解決のために口ではなく実際に行動を起こすことです。

テロの原因をリストにした場合、そのトップには、おそらく同じ地球の住人である数十億の人々が苦しんでいる極度の貧困が挙げられるでしょう。しかし、国連の後援によって描かれた「世界の貧困を2015年までに半減する」という計画は、実施される見込みがまったくない偽善的な要望のままにされているようです。

もし問題を解決する本当の行動がとられないなら、世界は最悪の道をたどり続けることになるでしょう。現在の状況でどうすれば真に求められる行動をとれるか――この課題は未解決のままです。希望は、「経済・社会・政治問題の解決に軍事力を使用しない」という国際法の新しいシステムに基づく各国間の平和的な協力のために戦う広範な世界運動を強化することにあるようです。この希望が早期に実現されることを期待するのは難しいとしても、この目標はすべての国でますます熱心に追求されるにふさわしいものだと思います。

2005年12月24日