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青年の決意が確かな平和を築く
アリソン・ベイルズ女史
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)元所長

若い人々の多くは国際安全保障の近代的なプロセスから疎外され、幻滅を感じています。彼らは軍隊と武器に莫大な資金がつぎ込まれ、大量破壊技術の脅威が核保有国と新たな核保有国になる誘惑にかられている国々との間で大きくなっているのを目にしています。また、昔からあるテロという挑戦の複雑さを見過ごし、一般市民の権利の過度な制限につながる恐れがある方法で、テロリズムが新たな「巨悪」として持ち上げられているのを青年は目にしています。同時に、彼らはダルフール紛争やインド洋の津波、カシミール地方での地震といった現実の人道的大惨事に対し、国際社会が不十分で遅く嫌々ながら対応した様子を目にしています。

若い人々のために言えることは、防衛や安全保障の問題に背を向けるべきではなく、そうしたことに関与している人々を非難すべきではないということです。良い安全保障と同様に悪い安全保障も人間から生まれます。したがって、常に人間が解決できる問題なのです。将来、平和が崩壊するか、それともより強固になるかは人間自身が決定することです。

兵器、戦争、内戦を含む伝統的な安全保障問題を、政府が処理するために残しておく必要はありません。市民は討議をし、自らの政府の行動をコントロールしなければなりません。また、企業(特に防衛設備や軍関係のサービスを提供している企業)が国内で何をしているか知るべきであり、彼らの見解をはっきりさせておくべきです。近代産業は重要な道徳問題や強い感情が危機にさらされた時に、利害関係者がいかに大きな影響を与えるかについてますます示すようになっています。さらに、公職に就いていない普通の人々は、復興のために実際的な支援や助言、人道的支援や医療を通じて紛争問題の解決に挑戦しているNGO(非政府組織)やチャリティー活動に参加したり、支援することができます。

テロや犯罪から、生命維持に必要なインフラ・生活必需品が偶然または意図的に破壊される可能性、気候変動や疫病といった自然の危険に至るまで、私たちが今日直面している安全保障に対する脅威と危険には、多くの非伝統的なものがあります。そこに軍隊の出番はなく、民間の専門家や市民社会自らが対応しなければならない問題です。科学者や責任を負うべきビジネスマン、自他共の生命を守る活動を助ける決意と技術を持った一般市民なしでは、政府はこうした問題をコントロールする希望を持てないでいます。また、市民はただ生きることが問題なのではなく、人生の質こそ問題なのだと指摘すべきです。そして、政府は新しい脅威を寄せ付けないために社会を刑務所に変えることを許すべきではありません。

こうした課題を解決するためには、すべての世代が共に働くことが必要です。しかし、いくつかの問題があります。例えばインターネットセキュリティーやネットワーク上の妨害行為にどう立ち向かうかなど、年配の人々にとって正しい答えどころか理解することさえ難しい新しい環境や脅威があるということです。21世紀に挑まれるだろう新たな挑戦や過去に解決できなかった課題の解決策を見出すため、私たちは若い世代の人々を頼りにしているのです。